日本ソムリエ協会本 「ワイン男子101人の“もてなし”ワイン300本」の裏側。

「ワイン男子」本が、話題に。

「ワイン男子101人の“もてなし”ワイン300本」が、去る7月7日に発売された。

日本ソムリエ協会誌「Sommelier」編集長が選抜した、全国のワインエキスパート、シニアワインエキスパートの男性101名による、「もてなし」をテーマにしたワイン本である。

ワイン男子本

選抜されたワインエキスパート、シニアワインエキスパートの肩書は、一般のビジネスマンから、医師、エンジニア、デザイナー、弁護士、投資家、僧侶、などいろいろ。
中には、ワイン歴●十年という強者もいる。

「ワインエキスパート」は、ソムリエやワインアドバイザーとならび、「ワインの品質判定に的確なる見識を持っている者」として、日本ソムリエ協会が正式に認める呼称認証のひとつである。

ソムリエやワインアドバイザーは、いわば「売る側」の立場であるのに対し、「ワインエキスパート」は、同等の知識・見識を持つ一般消費者。
業界のしがらみや慣習にとらわれない、自由な立場でワインを楽しむ、いわば「消費のプロ」達だ。

そんなディープなワイン・ラヴァー達が「家族、友人、職場の上司や同僚、部下をもてなすとしたら・・・」と企画されたのが、この「ワイン男子」本である。
101名が選んだワインには、各々の物語・想い・メッセージ・心意気が込められている。

また、101人が3本のワインを選定しているにもかかわらず、「“もてなし”ワイン300本」となっている点も、ちょっとしたミステリーとなっている。

怒涛の進撃「ワイン男子」

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「ワイン男子」本は、発売開始当日500部近い部数が売れ、3週間後には、2,000冊突破!
雑誌や業界紙でもない、ましてや一般書店で販売されていない、純粋なワイン本としては、上々の滑り出しである。

関西や北海道のラジオ番組でも、とりあげられ、その勢いはとどまるところを知らない。

前年に発刊された「ワイン女子」本もシナジー効果で、堅実に売れ行きを伸ばしている。

「ワイン男子」同士の交友も各地で行われており、濃いテーマ性をもつワイン会の報告が、FaceBook上で飛び交っている。

「賛助企業ワイン」の壁

ご縁あり、当サイトの管理メンバーのひとりである小生も、ワインを選ばせていただいた。
ただし、その選定・執筆の経緯には、幾多の苦難があったように感じている。
※以下は、個人的な経験をもとに書かしていただく。

ソムリエ協会賛助企業の壁

今回ワインを紹介する側として、もっとも「やっかい」な障壁となったのは、選ぶワインが「日本ソムリエ協会の賛助企業の取り扱い商品」に限定された点だろう。

同協会には、現在 約150社の賛助企業が名を連ねているが、その多くがフランスワインに比重を置いた品揃えの企業である。
イタリアワインに専門性のある企業は、1割にも満たない。
イタリアワインに腰をすえる者にとって、これは致命的な少なさである。
同じように、海外の特定の国のワインに強い思い入れを持っているワイン男子には、なかなか酷な作業だったに違いない。

実際、ワイン男子本の企画の話を頂いた際は、これまで幾度と訪問している、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の「マセレーションした白ワイン」を紹介したいと考えていた。
が、賛助企業の取り扱い商品の中で、それらのワインを見つけるのは、干し草の中から針を探すかのような作業だった。

ヴィナイオータ、ラシーヌ、ワインウェーブ、テラヴェール、フィラディス、といった、ビオロジカルなワインを豊富に取りそろえるインポーターが、協会の賛助企業でないことを、何度も恨めしく思った。

小生同様、この「賛助企業のしばり」に、もがき悩み苦しむワイン男子たちの様子は、彼らの日々のFaceBookの書き込みからも、伺えた。

悩ましい1,000円台ワイン

1000円台ワイン

今回、個人的にもっとも悩まされたのが、「1,000円台のもてなしワイン」という、お題だった。

小生は、普段前述のインポーターが扱っているような、北イタリアの自然派ワインや、ネッビオーロのヴィンテージ・ワインを愛飲している。
申し訳ないが、お題をが明かされた時点で、「そんな都合のいいワインなんか、あるわけがない」と、正直高をくくっていた。

第一、1,000円台で、満足のできるワインなど、これまでのワイン人生で、片手程度しか思い浮かばなかった。
しかも、実勢価格ではなく、メーカー販売価格で1,000円台のワインをセレクトせよ、というのである。(ハーフ・ボトルは不可)

更に4月になると、消費税率変更が加味された新価格が、各社から次々と発表され、推薦できそうなワインの候補は、ほとんどなくなってしまった。

とはいえ、文句を言っても始まらない。
ましてや飲まないワインを適当に選ぶなど、不誠実なことはできない。

一度先入観を捨て、ゼロベースで検証すべく、今回選出したワインを含む、賛助企業の1,000円台イタリアワインを24本ほどネット酒販店で購入。
複数本を数回に分け、定量的にテイスティングを行った。

この経験は、当初の予想に反し、とても貴重なものとなった。

他の取扱い商品を見て「自分好みのワインを扱っているはずはない」と決めつけていた賛助企業のワインにも、デイリーワインとして楽しめる、素晴らしいいくつも眠っていたのである。(無論、ダメなワインもあった)

何より、当初から推そうと考えていたワインについて、その品質の高さを再認識できたことは、とても大きな自信となった。

テイスティングには、我が女房殿も付き合ってくれた。
はじめは「毎日安いワインばかり飲ませて・・・」と文句を言っていたが、最後の頃には、自分だけのお気に入りワインを見つけていたようだ。

ワイン男子かく戦えり

ワイン男子「侍・ブラック」
この「ワイン男子」、表紙デザインが決まって以降、関係者の間では「サムライ・ブラック」とも呼ばれている。

小生は、当初この「サムライ・ブラック」に、フリウリ州の「マセレーションした白ワイン」の生産者として、デニス・モンタナールのワインを載せたいと思っていた。

自宅のセラーや倉庫には、デニスの ” Refosco ” や10年熟成した ” Uis Blancis ” が等が数本ある。
何より、新婚旅行の際、デニスの家を訪ね、彼と一緒に農園を巡り、共にワインを飲み、自家製のハムやパンを食べた、懐かしい思い出もあった。

早々に、ワイン3本分の記事を書き上げ、数週間が過ぎたころ、編集部より賛助企業のインポーターからのメールが転送されてきた。
デニスのワインについては、「現在取り扱っておりません。」との内容だった。

ワインは一から選び直しとなり、再び現行を書くことになった。
幸いにも、小生の場合は書き直しは1本分で済んだが、他のワイン男子の中も、取扱い対象外(不採用)の宣告を受けた者が、多数いたようだった。

ワイン男子と、賛助企業130社の間にはいっている編集部の手間も相当なもので、中には取扱いの確認がとれるまで数日の時間を要する、レスポンスの悪い賛助企業もいた。

書いては、返され、また選び、書く。
101名で1冊の本を作るために、真正面からワインに立ち向かう各人の姿は、まさに「サムライ」のようだった。
全員の原稿が揃ったという、編集部からの報告メールを読んだ際は、チーム全員でフルマラソン完走したかのような、すがすがしい感動があった。

ワイン男子に選ばれたワインとは?

ワイン男子が選んだワインは、実に多岐にわたっている。

最も多いのは生産国はフランス産で102本。日本のワインも健闘しており44本。次いでイタリアワインが41本。
その他、アメリカ、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、スペイン、チリ、オーストリア、南アフリカ、ポルトガル、イギリス、インド、中国、ハンガリー、レバノンのワインが選ばれた。

尚、ワイン男子達が「魂を込めて」選んだイタリアワインの生産者は、以下のとおり。

  • I Giusti & Zanza(イ・ジュスティ・エ・ザンツァ)
  • Col Dorcia(コル・ドルチャ)
  • Gaja(ガイヤ) ※2名が異なるワインを選出
  • Frescobaldi(フレスコバルディ) ※2名が異なるワインを選出
  • Duemani(ドゥエ マーニ)
  • Castello di Ama(カステッロ・ディ・アマ)
  • Ferragamo Family(フェラガモ・ファミリー)
  • Castellani(カステラーニ)
  • Erbaluna(エルバリューナ)
  • Giacomo Fenocchio(ジャコモ・フェノッキオ)
  • Fontanafredda(フォンタナフレッダ)
  • Roberto Sarotto (ロベルト・サロット)
  • Santero(サンテロ)
  • Luciano Sandrone(ルチアーノ・サンドローネ)
  • Luca Ferraris(ルカ・フェラリス)
  • Rocche dei Manzoni(ロッケ デイ マンゾーニ)
  • Selvagrossa(セルヴァグロッサ)
  • Velenosi Ercole(ヴェレノージ・エルコレ)
  • Piersanti(ピエール・サンティ) ※2名が異なるワインを選出
  • Saltarelli(サルタレッリ)
  • Cavalleri(カヴァッレーリ)
  • Bellavista(ベラヴィスタ)
  • Ca’ del Bosco(カ・デル・ボスコ )
  • Antinori(アンティノリ) ※2名が同じワインを選出
  • Planeta(プラネタ) ※2名が同じワインを選出
  • Caruso & Minini(カルーソ・エ・ミニーニ)
  • Vigneti Zabu(ヴィニエティ・ザブ)
  • Gulfi(アジィエンダ・アグリコーラ・グルフィ)
  • Teresa Raiz(テレザ・ライツ)
  • Villa Russiz(ヴィラ・ルシッツ)
  • Vie di Romans(ヴィエ・ディ・ロマンス)
  • Masi(マァジ)
  • Pieropan(ピエロパン)
  • Masciarelli(マシャレッリ)
  • Lungarotti(ルンガロッティ)
  • Medici Ermete(メディチ・エルメーテ)
  • Agricola Punica(アグリコーラ・プニカ )
  • Cantina Bolzano(カンティーナ・ボルツァーノ)

(計38社)

尚、各社のどのワインが選ばれたのか、また他の国のワインは何が選ばれたかは、実際に本を手に取り、ご自身の目で確認いただきたい。

有名な生産者でも、見落としがちなワインを、敢えて選んでいるあたりが、いかにも「ワイン男子」らしい。

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