Michele Moschioni (ミケーレ・モスキオーニ) 訪問 1/2
栽培困難な赤ワイン用地場品種から、官能的なモンスター・ワインを生みだす魔人、ミケーレ・モスキオーニ。
午前中、レ・デュエッ・テッレのフラヴィオ・バジリカータと食事をしていた際、突如始まった『Prepotto(プレポット)軍団、ワイン対決』のおかげで、すっかり出来上がってしまった。
ヘロヘロになりながら、Michele Moschioni (ミケーレ・モスキオーニ)が待つ Cividale Del Friuli へ。
Moschioni (モスキオーニ)家は 、イタリア『白ワインの聖地』フリウリ州において、生産するワインの85%以上が赤ワインという、異色の生産者である。
父 Davide (ダヴィテ)の代よりも、現在の Michele がワイナリーを運営するようになってから、注目を浴びるようになった。
その要因のひとつが、ヴェネト州の銘醸ワイン「アマローネ」のように、完熟した葡萄をアッパシメント(陰干し)させて、凝縮したワインを生産するノウハウ確立したことであろう。
こだわりの栽培・醸造
ざっと、テクニカルシートを見ただけでも、ミケーレ・モスキオーニの狂人ぶりが伺える。
- 標高150m、南東向きの土地に、現在約14ヘクタールの畑を所有。
- 植樹密度は、4,200本/ha、及び、5,800本/ha(こちらの方が新しい畑)
- 仕立は、全てグイヨー
まあ、この辺は普通か。しかし、
- 除草剤や乾燥剤等、化学薬品を一切使用しない。(有機肥料のみを散布)
- 地中の生態系に対する悪影響を考え、機械は使わない。
- 剪定 / グリーンハーベスト / 摘房 / 収穫 に至るまで、全て手作業。
さらに、
- 例年、9月中~10月20日頃にかけて収穫。
- 葡萄は、4kg用のケース、もしくはトレー(80x120cm)に丁寧に入れられ、モストの収穫量が約半分になるまで十分に陰干を行う。
- プレスされた果汁は、6,000リットルの開放型発酵槽に移され、天然酵母により自然発酵。その間の人為的な温度コントロールは基本的に行わない。
- 酵母を活性させるために、定期的に人力によるピジャージュ(櫂入れ)を行う。
- 完全にアルコール発酵が終了した後、今度はフレンチバリックに移し、約13ヶ月の間樽熟成。
- 更に1年大樽で熟成。
- 無濾過・無清澄でボトリングし、6ヶ月~8ヶ月ボトル内で熟成させた後に、リリース。
という、コダワリようである。
全く、聞いただけで、気が遠くなりそうだ。
いざ、訪問
この日、ガイドをしてくれたのは、長女の Alessia (アレッシア)さん。
おしとやかな雰囲気で、とても上品な感じがする。
英語が堪能なうえ、美人だ。
丁寧に挨拶を済ますと、アンティークな調度品が飾られた2階のゲストルームへと通された。
部屋の中央に大きなテーブル。
その上には、モスキオーニのロゴレリーフが刻まれたドブレ・マグナムサイズのピニョーロが置かれている。(ノーマルサイズとマグナムボトルは、プリントのロゴ)
T:「モスキオーニ家は、いつ頃から赤ワインを造っているの?」
A:「正確には1989年からね。 お爺さんも曾お爺さんも、ずーとワインを造っていたのよ。」
部屋の片隅に置いてあった、古いボトルが数本飾られている。
A:「あ、これは、Oserot (オセロット)のボトル。オセロットは、もう、植え替えてしまったけど、とっても古くこの地方に伝わる白ワイン用の地葡萄なの。」
A:「現在は、 Pignolo (ピニョーロ)、Schiopettino (スキオペッティーノ)、Cabernet Sauvignon(カベルネ・ソーヴィニョン)、Merlot(メルロー)、Tazzelenghe(タッツェレンゲ)、Refosco (レフォスコ)といった赤ワイン用の葡萄に、植え替えられているわ。」
A:「プレポットの生産者の中には、Tazzelenghe 100%のワインを造っている人もいるけど、モスキオーニでは、Tazzelengheはタニック過ぎて、それ単体で飲むのは難しので、主にブレンド用の品種として生産しているの。」
A:「他にも Celtico (チェルティコ)」という名前で、Cabernet Sauvignon:50%、Merlot:50%のブレンドワインも造っているわ。」
T:「白ワインも造っているってはずだけど、デザートワインだっけ?」
A:「そう。 Picolit(ピコリット)は父が植えた品種だけど、実は2008年に、私たちは更に、2種類の白ワインを造ることを決めたのよ。 トゥーティコ・ビアンコ(??これは上手く聞き取れなかった)、ビアンコ(トカイ&シャルドネ)の2種類ね。 それらの白は現在熟成中だけど、今日は飲みたい赤ワイン全て試飲できるわよ。」
T:「じゃ、全品種お願いしますね(笑)。 とは、言うものの、どの順番で飲むべきだろう? お薦めの順番はある?」
A:「そうね。まずは ” Refosco ” から始めるのがお薦めね。
その後は、” Celtico ” => ” Real ” => ” Schiopettino ” => ” Pignolo ” といきましょう! 」
セラーの中を拝見
突然、1階からミケーレ・モスキオーニの叫び声が!
M:「おーい、まずはセラーを見せるのが先だろう?! こっち来るように言ってくれ!!」
すると、美しい容姿に似合わない、大きなガナリ声で、娘が応酬。
A:「ったく、わかってるわよぉ。 だってパパ、さっきさ、家に居なかったじゃん。 私がちゃんとホストしているんだから、黙っててよ!!(怒)」
なんというか、この父娘、かなり面白い。
どうやら、親父の言うことが、いちいちウザく感じるお年頃のようだ。
テイスティングの準備が整うまで、とりあえず、ミケーレが待つ、1階のセラーへ。
コンパクトなカーブの中は、壁に層ように棚が組まれ、整然とバリックが置かれている。
Pignolo (ピニョーロ)、Tazzelenghe(タッツェレンゲ)といったタンニンの強い地場品種を中心に、Merlot(メルロー)などの国際品種が熟成されていた。
新樽のバリックを使っているのかは確認できなかったが、熟成に使っているバリックは、新品のようにピカピカだった。