Michele Moschioni (ミケーレ・モスキオーニ) 訪問 2/2
いざ、テイスティング再開
ゲストルームに戻り、再びモスキオーニ親子とテイスティング。
「今、ウチで出せるワインは2006年ばかりなんだよね・・・」と言いつながら、徐にグラスにワインを注ぐ、ミケーレ。
まずは、ボルドレーゼ(この地方では、ボルドー風のブレンドワインの事を、よくこう呼びます)の Celtico 2006 からスタート。
しかし、今さっき僕に薦めた順番ではなくなっているのか、どこまでもマイペースな親父に、アレッシアさんは、相当イラついている様子だった。
M:「2006年なので、このワインは、若いぁな。
この年は暑くて、葡萄の糖度がとても高くなり、A/C が15度以上となってしまった。
とてもハイ・アルコールなワインだ。
本来ならば、もっと酸度が必要となるはずなんだがな。
まあ、うちは、ナトゥラリスタだから、しょうがないよね。
日本のマーケットも、ビオロジカルなワインに人気が出ていることは、知っているよ。」
以下、当時のテイスティング・メモと録音を交えて。
Celtico(チェルティコ)2006
ブラックチェリーや黒系果実の香り。 干しぶどうの香りが微かにする。
柔らかく滑らかな舌触り。 親しみやすいチャーミングなワイン。
アルコール度数は、15.5 % 。
Real(レアル)2006
「舌を切る」の異名を持つ程タニックな葡萄 Tazzelenghe(50%)と、前述の Celtico(Cabernet Sauvignon:25%、Merlot:25%)を混醸したワイン。
厳しいタンニンを飲みやすくする為に混醸しているというが、既にタンニンが豊富。
ブラックチェリーやプラムの香りに、樽から来るタバコやカカオのニュアンスもある。
酸か強く、複雑味があり、エキサイティングな味わい。(A/C:14.5%)
国際品種と地場品種のブレンドワインということもあり、Domenico Clerico (ドメニコ クレリコ)の ALTE(アルテ) を彷彿とさせる。
Schioppettino (スキオッペティーノ)2006
前述 Real に比べればタニックさは極端に少なく感じる。(それだけ Tazzelenghe という葡萄のタンニンは強烈ということか!)
※ スキオッペティーノは、「 Ribolla Nera 」とも呼ばれ、フリウリお馴染みの地葡萄。 白ワイン用葡萄である Ribolla Gialla に通じる強い酸が特徴的。
アルコール度数は、驚異の 16% 。
甘いグリセリン香と共に、チェリー、プラム、胡椒、干しぶどう、珈琲の香り。
酸味と果実味のバランスの良さに加え、スパイシーな味わい。
「自らが主張してくるようなワイン」ではなく、時間をかけ、ダラダラと会話を楽しみながら飲むのに適したワイン。
Pignolo (ピニョーロ)2006
このセラーのトップ・キュベ。
ピニョーロは、僕が今まで飲んだワインで、中で最もタニックな葡萄の一つ。
暴力的も呼べるタニックな味わいは、とても若い内から飲めるシロモノではない。
モスキオーニのピニョーロ2006も同じ。
まだまだクローズで、本来の姿を測り知ることはできなかったが、ビッグでゆったりとした飲み心地は実感できた。
特に、酸の強さ、凝縮した果実の旨味は別格である。
後半、怒濤の如く押し寄せるタンニンも、陰干しの効果によって甘味すら感じる。
飲み頃は最低でも10年後。 個人的には20年程経過し、タンニンがそげ落ちた後の味わいを、楽しみたいものである。
アルコール度数は、 15.5% 。
Refosco dpt (レフォスコ) 2006
ピニョーロを飲んだ後では、味覚が麻痺してしまった。
若いレフォスコが、とてもジャミーでコンパクトな味わいに感じる。
始めからフィニッシュまで、レフォスコ特有の綺麗な酸味が、一本、スーーッと通っている。
アッパシメントしたことにより生まれる、干し葡萄ような甘いタンニンも、好感が持てる。
このワインもアルコール度数が高く、14.5% 。
Bisest (ビゼスト)2006
2005年が初リリースの、所謂「ごちゃ混ぜワイン」。
セパージュは、Pignolo(30%)、Schioppettino(40%)、Celtico (20%)と Real(10%)
後半2つは、それ自体がブレンドワインなので、もはやカオス的な混率だ。
なんだか、冷蔵庫の余り物をかき集めて作った「まかない料理」のようだが、個人的には、この Bisest が一番面白かった。
このワインも、まだクローズな状態。
本来の姿は伺いしれないが、甘いグリセリン香の後、ブラックチェリーやプラムの香りでむせ返りそうだった。
アルコール度数は、 14.5% 。
ピニョーロ栽培の苦労
こちらの写真は、同じ日に剪定した、ピニョーロ(上)とカベルネ・ソーヴィニョン(下)の葡萄の幼房。
ミケーレによれば、ピニョーロは、とても樹勢が強く、栽培の手間が恐ろしくかかる割に、病気にはめっぽう弱い品種、なのだそうだ。
わざわざ、畑から枝を切りだし、グングン伸びるピニョーロの樹勢の強さを説明してくれた。
最後まで、面白い父娘
一通り、テイスティングが終わった後、奥さんのSabinaさんも加わり、モスキオーニの家族と世間話。
M:「(アレッシアさんに向かって)お前も客人が来ているんだから、グラスに口を着けろよ!!」
A:「ダメよ!! だってこれから(自動車運転免許)の仮免のテストあるのよ! 」
M:「まったく、勝手な奴だな」
A:「カラビニエリに因縁つけられたら、今までの苦労は台無しだし、今日は、絶対に飲まない!!(怒)」
何かにつけて、父親に反抗しているかのような姿が、なんとも微笑ましい。
ピニョーロを傾けながら彼らの話を聞いている内に、他の生産者と同様の経営課題が持ち上がり、日本市場に関する調査資料のオファーを頂く。