フリウリ・ヴィンテージ・チャートを作った理由

なぜ、フリウリのヴィンテージチャートが必要なのか?

今日、インポーターさん達の誠実な営業活動のおかげで、様々なフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州(以下、フリウリ)産のワインを「日本に居ながらにして」楽しむが出来るようになりました。

その一方で、「ワインを選ぶ楽しみ」の1つの指標でもある、特定エリアの「ヴィンテージ」観をまとめた指標が同地域にもあってよいのでは?と思うに至りました。
知人から聞いた話ではワイン専門誌である「ワイナート」に同地域を特集したチャートがあるそうですが、これを書いている時点で、僕は見たこともありません。

また、ガンベロ・ロッソに代表されるガイドブックのヴィンテージ・チャートでも、「ピエモンテ」「トスカーナ」「キャンティ・クラシコ」「ブルネッロ」「アマローネ」「タウラージ」を体系づけたチャートは多数ありますが、僕が記録を始めた2003年頃には、「Colli Orientali del Friuri(コッリ・オリエンタリ・デル・フリウリ)」や「Collio(コッリオ)」のヴィンテージ・チャートを見たことは、ありませんでした。

理由としては、「白ワイン=クリーンで若いうち飲むもの」との通念は、未だ大勢的であることと、フリウリ全体が「白ワインの聖地」として名が通っていることにあると思われます。
つまり、「「リリース後2~3年で消費していまうイタリアの白ワインには、ヴィンテージ・チャートの必要性が認められていなかった」、ということでしょう。

ところが、現在は白ワインの楽しみ方も少しずつ変化してきました。
例えばイエルマンや、ヴィエ・ディ・ロマンスといった、磁場品種を持ちながらも、年数とともに輝きを増すワインを造る生産者が、多数でてきました。
また、ビオ・ダイナミックスやビノ・ロジカルを実践し、マセレーションした白ワインを造るような生産者も、広がりを見せています。
さらにフリウリは白ワインだけでなく、メルローやレフォスコ、ピニョーロ等栽培が、積極的に行われ、それら赤ワインに対する評価は、鰻登りです。

我々日本のイタリアン・ワイン・ラヴァー達も、一層 DOC COLLIO(コッリオ)に注目し、バローロやブルネッロ同様に、この地域のワインついて、本気で語り合っても良い時期に来ているのかもしれません。
(ラディコン達みたいにワインの良し悪しについて、本気で殴り合いをするのも困ったものですが…。)

チャートの存在意義に直面する

さて、実際にチャートを作ってみて、ある「不都合」に気がつきました。
ミクロ・クリマや造り手の力の差を無視し、一義的にワインの出来不出来を語ること自体ナンセンスである、という事実です。

世のヴィンテージ・チャートが、如何にごく少数の人物による主観をもとに、限られたサンプリングから拡大解釈した評価をアウトプットしているにすぎない、ということを身を以て理解できました。

「品種」「収穫時期」「醸造プロセス」「作り手の力量」「理想とするワインのスタイル」を束ね、1年間の評価としてしまう「ヴィンテージ・チャート」は、その概念そのものが、いわば暴挙といえます。

しかし、全体を俯瞰してみれば、その年の傾向や特徴を伺い知ることはでき、消費者にとって選択の大いなる一助となります。
ポジティブに捉えれば、「悪い年」とは「苦労させられた年」であり、「造り手により差の出た年」と解釈した方すべきでしょう。

当然、このブログで紹介しているGoriziaの巨匠達は、たとえ天候に恵まれない年であっても、それら欠点を補う以上の技量やセンス、何よりワインメーカーとしての高いプライドを兼ね備えた、もの凄い方ばかりです。

面白いことに、不思議と評価の低い年(彼らはスモール・ヴィンテージと呼びます)に限って、偉人Gravner(グラヴナー)は良年しか仕込まないとされる「Rujno(ルーニョ)」を、またNicolo Bensaはリゼルバ・クラスのワインを造っています。

チャートの製作工程

このサイトのビンテージ・チャートの作成にあたっては、現地訪問時にカンティナだけでなく、トラットリア、レストランで働くソムリエ、バールの親父やヘビー・ドランカーのお客さんからもヒアリングを行い、Gorizia県を中心とした「地元の方々の評価」を纏めてみました。
交友のあるダリオ、ラディコンや二コの「悪ガキ」ゴリツィアーニ3名に対しても、カンティナへ訪問した際には、ヴィンテージ観について、敢えて標準的に質問をしています。

さらに、日本で購入したフリウリワインについても、定量的にテイスティングを行い、評価の対象として加味しました。

読者の皆様が、お店でワインをお求めになられる際や、レストランでのご注文の際に、活用いただければ幸いです。

何より、フリウリのワインは本当に面白いです。
一人でも多くの「フリウリ・ワイン・ファン」が増えることをせつに望みます。

お互い多いに『フリウリ通』ぶりましょう!

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