Radikon (ラディコン) 訪問 :2度目 2/4
ラディコンのセラーの中のレイアウトは、前年と比べて殆ど変化がなかった。
下記の平面図のとおり、家屋からセラーへは、地下をとおり、セラーの階段横へと繋がる。
階段の下から奥のボッティ(大樽)にかけた右手の壁は、この地方特有の地層である ” PONKA(ポンカ)層 ” が、むきだしになっている。
ラディコンの神髄。マセレーションを行う大型トノー(木製開放型発酵槽)
壁の方が畑側(図の下側)に、30hl~35hlクラスの大型トノー(木製開放型発酵槽)が、6機。
奥(図の上部)の方には、ボッティ(大樽)が集中している。
トノーの中には、昨年収穫直前に彼の畑で食べた、 ” Ribolla Gialla (リボッラ・ジャラ) ” が熟成中。
この葡萄の実を食べた時には、あまりの糖度に驚愕した。
複数の葡萄をブレンドした白ワインである ” Oslavie(オスラヴィエ) ” や、 ハンガリーとの葡萄の名称論争の中、tokaj(トカイ)を逆さ読みにした ” Jakot(ヤーコット) ” も、ボッティの中で、然るべきときを待っている。
2007年のゴリツィアは、大変暑い年だったが、葡萄の出来映えは、素晴らしい年のようだ。
これら3アイテムを飲む限り、そのポテンシャルの高さがわかる。
「問題児」2005年ヴィンテージが、進化していた!
セラーの奥(図の上部)のボッティ(大樽)には、例の「問題児」達が眠っている。
当時、野獣の様なボリュームを尊ぶラディコン達は、2005年は2002年のように、「理想と遙かに乖離したワイン」のように語っていた。
※昨年のラディコンに関する記事にも、2005年ヴィンテージが彼らにとって不本意な年であることは書いた。
2005年のワインは、ボトリングされず、鬼っ子のように、隅っこに置かれたボッティの中に居続けていた。
その為か、熟成感が更に増し、昨年よりも繊細さに磨きがかかり、少し個性的なニュアンスのある、まとまりの良いワインへと変化していた。
進化を遂げたワインは、メンチカツや唐揚げなど、多くの日本人にとって、馴染みの洋食メニューとも相性が良さそうだ。
自然派ワインを日常の食事と楽しんでいる、一歩進んだ日本のワインファンとっては、好感のもてる味わいだ。(もちろん、他のセラーを圧倒する品質である。)
醸造家としての「匠の技」を、見せつけられた、想いだった。
圧倒的な2006年ヴィンテージ
一方、2006年ヴィンテージは「暴力的」といっていいほど、パワフルだ。
” Jakot 2005 ” と ” Jakot 2006 ” を比較させてもらった。
2005年は、トカイ・フリウラーノ種らしからぬ、果実味よりも強い酸味が中心を占める仕上がり。
2006年は、既にシェリーの様な熟成香が出始め、凶悪なまでのボリューム感がある。
あまりの表現の違いに大変驚かされました。
このような、ヴィンテージ差による味わいの違いは、 ” Oslavje(オスラヴィエ) ” にも現れていた。
” Oslavie ” の2005年も、先に果実味よりも、酸味が牽引する味わいとなっている。
一方、2006年は非常にバランスが優れ、ゆったりとしたスケール感が漂う。
従来の常識を超える、ラディコン・メルロー2006
セラーの中央と階段正面奥(図の左側)には、バリックが山高く積まれている。
今回は、この中から、赤ワインを中心にテイスティングさせてもらった。
バリックに静かに眠る ” Merlot(メルロー)2004 ” 。
酸・果実味とも高いレベルでバランスがとれている。
既に熟成感で出ていて、今すぐにでもボトリングしても不思議ではない程の完成度だ。
一方 ” Merlot 2006 ” は、凝縮感が2004年よりも強く、暴力的なまでにタニック。
古いバリックで、更に熟成させることによって、タンニンは滑らかになる。
恐らく、この年のメルローは、「ラディコン・メルロー奇跡の年」と呼ばれるだろう。
イタリアワイン界が震撼する、脅威の赤ワイン「ラディコン・ピニョーロ」
今回の訪問で、一番感銘を受けたのが、 ” Pignolo(ピニョーロ) ” である。
写真に写る彼の表情は、かなり悦に入っているように見えるが、その気持ちも良くわかる程、素晴らしい味わいのワインだった。
現在ラディコンがトロンセ産のバリックで熟成させている ” Pignolo 2003 ” は、トレ・ビッキエリを確実に獲る実力がある。
(2013年、スタンコにメールで確認したが、この ” Pignolo 2003 ” は、十分な流通量がないため、自家消費用ワインとしたそうだ。)
更に、 ” Pignolo 2007 ” は、より高い評価を受けることになるだろう。
今後、ラディコン・ピニョーロの成功に影響を受けた Collio の造り手達は、挙(こぞ)ってピニョーロに植えるのではないだろうか。
レフォスコと並ぶ赤ワイン用の地場葡萄品種として、定着するかもしれない。
更には、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州は「白ワインの聖地」としてではなく、新たな「赤ワインの聖地」として、世界に名を馳せる可能性だってある。
実は、グラヴネルのセラーで熟成過程のピニョーロ2003を飲んだ時は、まだフラッグシップである「ルーニョ(メルロー100%)」のレベルには達していなかった。
皮肉な話だが、今回、(グラヴネルの道の向いに住む)ラディコンが造ったピニョーロを飲み、何故グラヴネルがメルローを全て引き抜いてまで、ピニョーロを植えようとしたのか、納得ができた。
エキス感(密度)や複雑性という点においては、ピニョーロは、メルローよりも優れた葡萄のように思える。
更に言うと、ラディコンが仕込んでいる、” Pignolo 2003 ” は、Borc Dodon(ボルク・ドドン)のデニスが造つった伝説のレフォスコ ” Refosco Scodaovacca 2003 ” を、連想させた。
血の固まりの様な強烈な果実の凝縮感。
いや、酸味の強さは、デニスのレフォスコ以上か。
余韻も遙かに長く、正に「モンスター・ワイン」と呼べるに相応しい逸品である。
こんなワインも、こっそり造っていた!
なんと、 ” Pino Nero(ピノ・ネロ)2007 ” である。
世界的な人気の品種であるピノ・ノワール。
他のラディコンのアイテム同様に強力な果実味とボリューム感があり、既に生革の様な熟成香を漂わせていた。
ヴィナイオータの太田社長が買い付けている、熟成中の2004。
ノリノリのスタンコに強く奨められるがままに(悪いからって断ったんですが…)、ほんの少しだけ味見させて頂きました。
それはそれは、凄いことに・・・・!
早く日本に入ってこないかな~。
さて、前記の ” Oslavie 2006 ” は、実はRiservaもひっそり仕込んでいる。
” Oslavie 2006 ” と比較すると、Riservaの方が一段と凝縮感・複雑性が強い。
ラ・カステッラーダのニコも言っていたが、2006年はゴリツィアの造り手達にとって「特別な年」になりそうだ。
” Oslavie 2004 Riserva” も飲ませて頂いた。
しかし、「俺的には、Oslavie2004 Riservaは、Riservaと呼ぶには今ひとつなんだよねぇ。」とスタンコ・ラディコンは語る。
ニコ・ベンサが語るように、スタンコ・ラディコンにとっても、北イタリア全体でも評価の高い2004年ヴィンテージは、単なる「良年」でしかないらしい。
彼らの「当たり前のレベル」は、我々の想像と期待の遥かに高いところにある。
関連記事
Radikon (ラディコン) 訪問 :1度目 1/2
Radikon (ラディコン) 訪問 :1度目 2/2
Radikon (ラディコン) 訪問 :2度目 1/4
Radikon (ラディコン) 訪問 :2度目 2/4
Radikon (ラディコン) 訪問 :2度目 3/4
Radikon (ラディコン) 訪問 :2度目 4/4
Radikon (ラディコン) 訪問 :3度目