Venica e Venica 訪問 1/2
多くのワイン・ガイドで高い評価を獲得しているカンティーナ、Venica e Venica(ヴェニカ・エ・ヴェニカ) のセラーがある、Dolegna del Collio(ドレーニャ・デル・コッリオ)を訪ねる。
フリウリの白ワインの特徴は、大きく2つ。
ひとつは、Gravner(グラヴネル)や Radikon(ラディコン) のようなマセレーションした「濁酒(どぶろく)」のようなワイン。
もうひとつは、その対局にある、葡萄の個性を極限まで磨く、クリーンな純米大吟醸の如きワイン。
後者の代表ともいえる生産者が、Venica e Venica である。
Venica e Venicaのワインは、飲み始めの頃は線も細く、表記されているアルコール度数よりも「水っぽく」感じるが、後からぐんと伸びてくる。
まるでフレンチワインのような味わいを、フリウリの地場品種で挑戦しているかのようである。
地図を頼りに、Dolegna del Collio(ドレーニャ・デル・コッリオ)についたのは、その日の午前中。
人口400人そこそこのコミューンでは、道を尋ねたくても、人っ子一人いない。
どうやら、写真にあるこの交差点が、コミューンの中心地らしい。
イラスト地図のおかげで、Venica e Venica の場所の目安がついた。
よく見ると、日本では聞いたことが無いような造り手の名前が、沢山載っている。
この一帯は、「葡萄王国」とも呼ぶべき場所。
Dolegna del Collioの中を流れる小川を越え、2~3km程進めば、銘醸地 Prepotto(プレポット)。
D.O.C. Colli Orientali del Friuli(コッリ・オリエンタリ・デル・フリウーリ)の中心地である。
このDolegna del Collio には Frazione Rutars というエリアがあり、そこには「フリウリのネバーランド」とでも呼ぶべき、Jermann(イエルマン)の巨大ワイナリー(邸宅)がある。
Venica e Venica も、そのイエルマンに負けない程、スケールの大きい有名ワイナリー。
立派な門構えと、広い畑をとおってワイナリーへと続く一本道。
まるで一国の迎賓館を思わせる風景だ。
Venica e Venica(ヴェニカ・エ・ヴェニカ)の施設に到着
一貫して家族経営を続けてきたワイナリー、Venica e Venica(ヴェニカ・エ・ヴェニカ)の歴史は、80年程。
ワイナリーの創始者である Daniele Venica(ダニエレ・ヴェニカ)に始まり、先代の故 Adelchi(アデルキ・ヴェニカ)の跡を継いだ現醸造責任者である Gianni(ジャンニ) と Giorgio(ジョルジョ)の兄弟によってワイナリーが運営されてる。
また、ジャンニの息子 Giampaolo も積極的にワイン造りに参加している。
ワイナリーの隣に併設されているコテージは、ジャンニの奥さん Ornella(オルネッラ)によって運営されている。
(※朝食付。なんとテニスコートやプールまである)
僕が到着したとき、ちょうどそのコテージで、ワイン・ツーリズムの為に来たと思われる、優雅な団体客に出くわした。
ゲストルームで待っていると、軽快な足取りでオルネッラさんがやって来た。
予定が詰まっていたため、滞在時間が短くなってまう事をお詫びすると、
「 No Problem ! ヴェニカ・エ・ヴェニカは小さいワイナリーだから心配ないわ。 コンパクトにガイドするわよ。」とのこと。
ここに到着するまでに、広大な畑やお屋敷を散々目に焼き付けてきた者からすると、とても小さいワイナリーとは思えない。
最高賞連発する、凄いワイナリー。
壁には、イタリアの有名ワインガイドから贈られた賞状が、所せましと飾られている。
「エスプレッソ誌の方が、ガンベロ・ロッソより嬉しいわね。」とのこと。
これには、僕も思わず笑ってしまった。 (コッリオでは、なぜか、ガンベロ・ロッソを馬鹿にする作り手が多い。)
ソムリエ協会の最高賞である「5グラッポリ」の賞状もズラリと並ぶ。 凄い!!
更にワイナリーの奥深く・・・。
宿泊客は、この食堂で朝食をとるらしい。
食堂を抜けて奥に進むと、ヴェニカ家の歴史を物語る、ワイン・ストック・ルーム。
古いボトルが沢山。
ラベルが刷新されてから初リリースとなった Ribolla Gialla 1987 。
彼らにとってキー・フォー・サクセスとなった、記念すべきヴィンテージである。
創設者である、Daniele Venica(ダニエレ・ヴェニカ)氏が、この地でワイナリーを起こした年(1929年)が刻まれている。
ワイナリーの心臓部。徹底したコンピューター管理システムと無数のタンク
奥に進むと、熟成中ワインを蓄えたバリックが並ぶ部屋が広がる。
さらに進むと醸造管理室へ。
Venica e Venica(ヴェニカ・エ・ヴェニカ)特有の、クリーンな味わいを生み出す、醸造の心臓部、コンピューター制御室。
同社は、「低温発酵」「コールド・マセレーション」を重要視しているが、コンピューターで管理するシステムを採用している。
発酵時から醸造に至る工程の温度の推移は、常時監視しされており、成分データも含め、詳細にデータが収集されている。
「ヴェニカ・エ・ヴェニカは、全37ヘクタールの畑が Dolegna del Collio(ドレーニャ・デル・コッリオ)内にあって、醸造施設は4ヘクタール。 生産比率は、15%は赤ワインで、残り85%が白ワイン。 生産本数は 年間約300,000 本程度しかないのよ。 (ワインメーカーとして)ウチは小さいのよね。」 と、オルネッラさんは解説してくれた。
( ※ 2010年のVini d’Italia では 240,000本となっているが、この辺りの違いはジャンニに聞いてみないと分からないと思う)
オルネッラさんの後に続き、奥に進むと現れたのが、無数のステンレス製タンク群。
四角いもの、縦長のもの、等、様々な形のタンクが、壁沿いに隙間なく配置されている。
どうして、これだけの種類のタンクが、いくつも必要なのか聞いてみた。
「タンクはとても重要なのよ。例えばソーヴィニョンなら、収穫場所(畑)ごとに、収穫時期が異なるでしょ。 私達は、5~6回に分けて収穫を行い、それぞれ別々のタンクを使って発酵させて、翌2月になってから、それらを一つのタンクにまとめるのよ。」とのこと。
これは、当ブログではお馴染み、 Garbellotto社(ガルベロット)製 の大樽。
「綺麗な樽でしょぉ。 例えば Ribolla Gialla なら、60%を大樽(フレンチオーク材)で、40%をステンレスタンクで発酵を行い、2月に一つにするの。澱臭さが感じにくくなり、、親しみやすい味わいのワインになるのよ。」
Ribolla Gialla l’Adelchi 2007 の解説タペストリー。
このワインは、 Gianni(ジャンニ) と Giorgio(ジョルジョ)兄弟と友人達が、父親 Adelchi(アデルキ・ヴェニカ)に捧げられたスペシャル・キュベである。
60年間、辛抱強く畑で戦い続けた先代に対する、感謝と愛情が込められている。
Gianni(ジャンニ) と Giorgio(ジョルジョ)を描いた、だまし絵。
こちらは、開祖ダニエレ。 手抜きをしないように、睨みをきかせているかのようだ。