イタリアでは、いくつものワイン・ガイドブックが発刊されています。 その中でも特に、注目に値するのが、以下の6誌です。
どのガイドブックも、独自の視点で厳しくワインを評価しています。
複数のガイドブックから、最高賞(最上位の格付け) を集めている銘柄やその生産年は、客観的に見ても、「ひときわ優れた品質である」と考えてよいでしょう。
Gambero Rosso(ガンベロ・ロッソ)
イタリアワインや料理の分野を中心とした出版グループ「ガンベロ・ロッソ」社が発行している、ワイン専門誌です。
同社は、1986年、Stefano Bonilli氏によって設立されました。
「ヴィーニ・ディタリア」は、1987年、スローフード協会の共著としてスタート。
以来、イタリアワインに関して世界的にもっとも影響力のあるガイドブックとなりました。(2010年よりGambero Rosso社単体で出版)
また、1990年に発刊された”Ristoranti d'Italia del Gambero Rosso” は、フランスの「ミシュランガイド」や「エスプレッソ」とならぶ、「イタリア3大レストンガイドのひとつ」と呼ばれています。
最上位の格付けは、”Tre Bicchieri(トレ・ビッキエーリ: 3グラス)”。
グラスの数と、色で評価を表示しています。 例年10月下旬に評価が発表され、
の4段階評価で表示されます。
トレ・ビッキエーリを10回以上獲得すると、生産者の名前に星マーク(★)が付きます。(20回だと★2つ。30回なら★3つ)
また、トレ・ビッキエーリ以外にも、「最優秀醸造家」「最優秀葡萄栽培家」など、様々なカテゴリーで年間最優秀賞を決めています。
良い意味でも、悪い意味でも、流行通信です。
イタリアワインを、芸術やファッションを楽しむように、メジャーな文化として昇華・発展させてきた同社の役割はとても大きかったと言えるでしょう。
トレ・ビッキエーリを獲得したワインは、単に「凄いワイン」というだけでなく、「今、イケてるワイン」という側面もあるようです。
イタリアソムリエ協会(Associazione italiana sommelier 略称:AIS)
「BIBENDA(ビベンダ)」は、ワインのサービスのプロの育成、およびイタリアのワイン文化と伝統的食文化の振興を目的として設立された、イタリアソムリエ協会が発刊しているワイン専門誌です。(以前は、”Duemilavini”と言う名称でした。)。
1965年、Gianfranco Botti氏(初代会長)、Jean Valenti氏、Leonardo Gerra氏、Ernesto Rossi氏 によって、イタリアソムリエ協会は設立されました。
ビベンダの最高賞には、 Cinque Grappoli(チンクエ・グラッポリ: 5房)の称号が与えられます。
例年10月下旬に評価が発表され、5段階評価のブドウ房(グラッポリ)の数で表示されます。
非常に卓越したワイン(91~100点)に、最上位の Cinque Grappoli(チンクエ・グラッポリ: 5房)が与えられますが、評価点は公表されません。
計10回以上のチンクエ・グラッポリを獲得すると、タスティヴァンマークが表示されます。
ガイドに記載されているデータ量が豊富。
生産地だけでなく、ワインごとに飲み頃を示すアイコンがついていたり、生産本数やアルコール度数など詳細なデータが記載されています。
大小問わず、多くの生産者達からあつい信頼を集めています。
ヴェロネッリ出版
ワインだけでなくイタリアの食文化に多大な影響を与えた、稀代の食通ジャーナリスト ”Luisi Veronelli(ルイジ・ヴェロネッリ氏 :1926-2004没)”氏によって創刊されたワインガイド。
ヴェロネッリ氏は、イタリアにおいて、はじめてテイスティングによるワイン評価を行った人物とされ、読者だけでなく、多くの生産者達からも敬愛を集めていました。
1970年代 ”Catalogo Bolaffi Dei Vini D'Italia”というタイトルのワインガイドを発表してきました。
ヴェロネッリ氏亡きあと、ジジ・ブロッツォーニ氏とダニエル・トーマシス氏によって発刊が継続されています。
100点満点評価。
非常に卓越したワイン(94~100点)に、”Tre Stelle(トレ・ステッレ:3星)”が贈られ、 過去3年以上3星で、かつ今回も3星を獲得したワインに”Supper Tre Stelle(スーパー・トレ・ステッレ:3星)”が贈られます。
※以前は3星は、90点以上でしたが、近年厳格化されました。
また、テイスター達が特に感動したワインには、「イル・ソーレ(太陽)」という賞が贈られています。
ヴェロネッリ氏のワインに対する愛があふれ過ぎているせいか、圧倒的に他のワインガイドよりも、最高賞の本数が多いです。(近年は、厳格化され本数が減少しました。)
中には、「よくこんな生産者を見つけてきたな」と驚かされるような、(その当時は)殆ど無名といってもいい生産者やワインの名前も載っています。
ややもすると生産者にやさしいワインガイドでしたが、あの、ロバート・パーカー・Jr.の ”Wine Advocate誌”のイタリア担当であるダニエル・トーマシス氏が加わり、どのように方針が変わるのか、注目です。
イタリア・スロー・フード出版
それまで共著していた Gambero Rosso(ガンベロ・ロッソ)社と袂(たもと)を分かれ、2010年より、イタリア・スローフード協会が単独で出版したワインガイド。
ワイナリーの歴史、土地とのかかわり、環境への取り組みなど、多角的に評価をしています。
特に、ポイント制は用いず、
の、3つのカテゴリで評価されています。
「スローワイン」では、格式が高く、すでに世間的な評価が定まっている ”Grande Vino” ワインよりも、普段の生活に寄り添うような ”Vino Slow” ワインの発掘に力を注いでいます。
そのためか、小規模な自然派ワイナリーの名前も、頻繁に顔を出します。
エスプレッソ出版グループ
大手新聞社“エスプレッソ”紙が発刊する、ワイン専門のガイドブックです。
非常に辛口なコメントが多い反面、褒めるときは「超」が付くほどのベタ褒めをします。
こちらも、ガンベロ・ロッソ同様に、センセーショナルな話題を多く振りまいています。
20点満点で評価を行い、
として、ボトル(ボッティーリエ)の数で、評価が表されていました。
2017年度版からはこれまでの5段評価をやめ、
の計300本を、それぞれ1位~100位までランキング形式で発表しています。
厳しいコメントもさることながら、評価点数やランキングを明示しているのが特徴的です。
どのワインを高く評価しているのかが、明快に判りやすく書かれています。
ただし、エスプレッソ社の取扱商品も、しれっと紛れ込んでいるので、盲信は禁物です。
イタリア・ツーリング・クラブ
主にイタリアの「地場品種」に焦点を当てたワインガイドです。(フランチャコルタなどの例外あり)
2017年版では、特定の地域に強いコーディネーター21名が選出され、彼らを中心にそれぞれ審議会が作られ、計80名以上のテイスター達が協力してワイン品評を行いました。
ステッレ(星)、コローナ(王冠)で表示されます。
2017年版以降は、Goloden Star(金星)がコローナに準じる賞として、新設されました。
小規模の生産者のワインにも目が届いており、質実剛健な印象があります。
同氏は、他の6誌よりも早く発表が行われるため、その年の動向をチェックする上でも、欠かせない情報源です。