バローロの王 Giacomo Conterno (ジャコモ・コンテルノ) 訪問
※ブログ移転に際し、この記事は2007年に訪問した際の記録を、リライトしました。
※正式な企業名は、” Conterno Giacomo Azienda Vitivinicola “ですが、本文中は一般的な名称である ” Giacomo Conterno ” で記載します。
– イタリアワインに携わる者にとって、敬意を払わざるをえない偉大な存在 –
唯一無二。バローロの絶対神。
『別格中の別格』とは、Giacomo Conterno(ジャコモ・コンテルノ)の造るフラッグシップ・ワイン、”Barolo Monfortino Riserva(バローロ・モンフォルティーノ・リゼルヴァ)” にこそ、ふさわしい言葉である。
バローロ生産地区の中心街の町、アルバ。
世界中から美食をもとめてやってくるこの町で、エノテカを数件訪ねれば、このモンフォルティーノが、いかに特別なワインなのかが、よくわかる。
長期熟成に耐えうる特別な葡萄が収穫できた年のみにしか生産されない、”Barolo Monfortino Riserva(バローロ・モンフォルティーノ・リゼルヴァ)” は、その店も意匠的に陳列され、あたかも美術品や骨董のような扱いである。
無論、ワインの値段も桁外れに高額である。
また、リストランテのワインカーヴを覗けば、どの店も、いにしえより伝わる宝物のように、大切にボトルが貯蔵されている。
ジャコモ・コンテルノのワイン
Giacomo Conterno の看板アイテムといえば
- Barolo Monfortino Riserva (バローロ・モンフォルティーノ・リゼルヴァ)
- Barolo Cascina Francia (バローロ・カッシーナ・フランチャ)
- Barbera (バルベーラ)
の3アイテムである。
“Barolo Monfortino Riserva” は、”Botte(ボッテ)”と呼ばれる大樽で7年間、”Barolo Cascina Francia” は4年間熟成熟成を経てリリースされる。
歴史を振り返れば、同社は、嘗ては(特に70年代までは)、現在よりも豊富な商品数をリリースしていた。
海外のオークション・サイトを見ると、Giacomo Conterno の名前で作られている “Barbaresco(バルバレスコ)” や、”Freisa(フレイザ)” 、 “Grignolino(グリニョリーノ)” といった、大衆向けワインの古いボトルを、結構な確率で目にする。
ジャコモ・コンテルノは、常に、長期熟成に耐えうる究極バローロを、常に追い求めてきた。
これまで、十分な品質に満たないと判断した年は、格下の「ランゲ・ネッビオーロ」としてリリースした。
更に納得出来ない年のワインは、バルク売りをしたこともあった。
2000年位までは、” Dolcetto(ドルチェット)” も造っていた。
2008年、現当主であるロベルト・コンテルノは、セッラルンガ・ダルバ北部のクリュ ” Cerretta(チェレッタ) ” に、約3haの畑を買った。
“Langhe Nebbiolo” と “Barbera d’Alba” 用の葡萄が栽培されていいる。
“Langhe Nebbiolo”は、2009年ヴィンテージまでで、2010年以降は、ノーマルクラスのバローロ、” barolo Cerretta ” としてリリースされる予定である。
また、2015年には、バローロの有名クリュの一つ、Arione(アリオーネ)にも、約9haの畑を取得した。(1960年代からジジ・ロッソが所有していた畑)
ジャコモ・コンテルノの実力
これまで、Giacomo Conterno(ジャコモ・コンテルノ)は、一般的に「良い年」とは言えないヴィンテージ(例えば、1968, 1969, 1987, 1993, 2002, 2005, 等)であっても、堂々とリゼルヴァ・クラスである ” Monfortino ” をリリースしてきた。
多くの生産者が、厳しいワインガイドの評価に晒される不作の年においても、” Monfortino ” に至っては、全くの「どこ吹く風」。
そもそも「当たり前の基準(標準的な品質のレベル)」が、他の生産者と比べても別格なのである。
「凡庸・平凡な年」は、ジャコモ・コンテルノにとっては、単なる「ハンデ戦」に過ぎない。
無論、結果は全戦全勝。 そもそも酒質が違いすぎるのである。
歴史
今日、イタリアを代表するワイン・メーカーである Giacomo Conterno には、古く複雑な歴史がある。
多くのワイン・ジャーナリストや海外のワインサイト等がこぞって取り上げているので、その気になればいくらでも知ることは出来ると思うが、要約文を以下にまとめた。
興味のある方は、ご一読頂ければ幸いである。
セラー内部
ジャコモ・コンテルノのカンティーナは、モンフォルテ・ダルバ村の中央広場に面した、教会の脇の坂道を下っていった先にある。
広い敷地の中に、華美でなく品の良いゴルフのクラブハウスを思わせるような屋根の低い建物。
玄関の脇がオフィス・スペースになっている。
中では、現当主であるロベルト氏自らが、海外からかかってきた電話とファックスの対応に追われている最中だった。
客間に待たされている間も、注文の電話はひっきりなしの状態。 可哀想に思えるほどの、慌(あわただ)しさだった。
Giacomo Conternoのセラーの中は、実に清潔である。
イタリアワインの素晴らしさをいち早く日本に紹介してきた先駆者である、高木 幹太氏が綴った名著「イタリア銘醸ワイン案内」でも紹介されているように、施設内にはスラヴォニアン・オーク(大樽)やステンレスタンクが整然と並び、「塵ひとつ落ちていない」とう表現がしっくりくるほど、清潔に保たれている。
「良いワインを造るためには、セラーを清潔に保つことが絶対条件である」という先々代からの教えを、ロベルト氏も頑なに守っている。
常に忙しいロベルト氏は、電話が済めば急いでアテンドしに戻ってきてくれるのだが、、すぐに別の電話に呼び出されてしまう始末。
彼曰く、この時期はこうした状況は日常とのこと。
実際、常時電話に出られるように、セラー内のいたるところに固定電話されている。(モンフォルテ村での携帯電話の電波事情は微妙な感じ)
ピエモンテに来る前、ラディコン、ニコ・ベンサ、ヨシュコ・グラヴネルといった、ゴリツィアの造り手のセラーを巡ってきたが、そこで見た大樽と、実によく似た樽を使っている。
一次発酵のプロセスで用いるそうだが、隅々までピカピカに磨き上げられている。
この古い大樽こそが、至高のバローロを熟成させる「魔法の大樽」。
僕が訪問した2007年8月現在、この Garbellotto(ガルベロット)社の大樽の中には、” Cascina Francia 06 “が眠っている。
( Garbellotto 社はヴェネト州のConegrianoにある大樽「ボッティ」のトップメーカー。イタリアで同社以外の大樽使っているセラーを探すことの方が困難)
40年~50年たった大樽が現役で活躍しており、新しいものでも既に5年は経過していた。
写真はないが、プレス機も見せて頂いた。
僕の持論だが、ジャコモ・コンテルノのワインに共通する味わいの特徴は、
- 香りや味わいの『スケール』
- その液体の『ピュアさ』
- エグ味が無く、高級車のエンジン潤滑油を連想させる『オイリーで滑らかな舌触り』
- モンフォルテらしい、『厳格』で酸味の強い味わい
に現れると思っている。
特に3番目の「飲み心地」を引き出すのに重要になってくるが、プレス作業である。
葡萄に少しでもストレスを加えては、この飲み心地は生まれないため、ジャコモ・コンテルノでは長時間かけてフリー・ランによるプレスを行う。
仕事の手が離れたロベルト氏と、ゲストルームで二人きりのテイスティング。
彼曰く、ジャコモ・コンテルノの各アイテムは、大降りのブルゴーニュ・グラスで頂くのが、一番美味しく味わえるのだそうだ。
” Barbera 05″ から始め、” Cascina Francia 03 “、そして ” Monfortino Riserva ” へのフライトを愉しむ。
・・・旨い。
・・・ただただ、旨い。 ワインを褒め称える言葉が空しく感じる程の、旨さだ。
何より、3つのワインとも、セッラルンガのテロワールが持つ「厳格さ」と「エレガンス」が最大限表現されていた。
イタリアワインの頂点、ここにあり。
畑へ
会話も弾み、「是非、自慢のセッラルンガの畑を見せてほしい」と厚かましいお願いをしたところ、よほど機嫌がよかったのか、驚くほどあっさり快諾頂く。
美人秘書に車の助手席に乗ってもらい、いざ、” Cascina Francia ” や ” Monfortino Riserva ” を生み出す、憧れの葡萄畑へ。
十字架は立ってなくても、僕にとっては、ここが世界で一番旨いワインが生まれる最高の畑だ。
斜面に切り立つ見事な葡萄畑。微かに” Nebbia “(ネッビア・霧)で遠くが霞んでみえる。
樹齢80年以上、創始者ジャコモが植樹した MONFORTINO 伝説を生んだ畑と、たわわに実ったネッビオーロの房。
最高の状態で収穫できたならば、” Monfortino Riserva 2007 ” になる予定の葡萄である。